『社会学評論』の千田論文について(3): スコットランドの事例

ここ数日のやりとり*1について千田さんがまとめられたようなので、私のほうでもまとめておきます。 といっても私の主張は最初にブログで書いたことにほぼ尽きています。 すなわち、スコットランド政府の組織内産休方針の文言において you must be the expect…

『社会学評論』の千田論文について(2)

2022.4.21 追記あり 2. トランスイシューに関する記述について 前のエントリの続きです。こちらのほうが本題。 先に述べたとおり、6節はここだけ「フェミニズムとジェンダー理論」の著作の紹介という形をとっていないという点で異様なのですが、その代わりに…

『社会学評論』の千田論文について(1)

『社会学評論』*1の72巻4号で、「ジェンダー研究の挑戦」という公募特集*2が組まれています。この記事ではそこに掲載されている千田有紀さんの論文「フェミニズム、ジェンダー論における差異の政治」について、私の簡単な感想を記しておきます。 千田さんは…

千田有紀「LGBT法案をめぐる攻防が炙り出した『ねじれ』」についての補足

この記事はこのツイートについての補足説明です。 この記事はトランス排除言説にもとから共感する人には自分の考えが擁護されたように見え、そうした言説の問題点を知る人には排除言説そのものに見え、よく知らない人には「両論併記」の中庸なもの見えるでし…

『現代思想』の千田論考について

はじめに 『現代思想 フェミニズムの現在』に収録されている千田さんの論考「『女』の境界線を引き直す―『ターフ』をめぐる対立を越えて」を読みました。いろいろと問題を感じましたが、それ以前に非常にわかりにくかったので、その点について簡単にまとめて…

「女性専用スペース」とトランスフォビア

はじめに この長い記事の目的は、現在ツイッター上で生じているトランスフォビアの問題について、若干の問題の整理を試みることで、トランスフォビックな語りの停止に多少なりとも貢献を試みることです。 ここで「問題の整理」ということで私が意味している…

フェミニズムが「男並み平等」を求めるものでなくなった理由

はじめに 先日、広辞苑の「フェミニズム」の項目が新しくなったというニュースがありました。以前は「女性の社会的・政治的・法律的・性的な自己決定権を主張し、男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動。女性解放思想。女権拡張論」と…

日本における「同一価値労働同一賃金」問題

終わりにすると言いながら書いていますが。「同一価値労働同一賃金」という言葉があります。文字通り、同じ価値をもつ労働には、同じだけの賃金を払わなくてはいけませんよー、という原則のことです。国際的にはILO100号条約に規定されており、日本も1967年…

賃金格差問題エントリへの補遺

前エントリへのたくさんのご反応ありがとうございました。ただ、ツイッターでのやりとりを前提にしていたものだったので、そちらを継続的にご覧になっていない方には文脈がわかりづらかったかもしれません。そのせいか、いくつか誤解にもとづくと思われるご…

男女間賃金格差問題の基本のき

ええと、どうでもいい話といえばどうでもいい話なのですが、twitterで発生したミスコン批判をめぐる議論の中で、「反ミスコン批判」の立場に立つ小倉弁護士の女性労働についての認識がアレなことになっていたので、議論が雲散霧消する前に書きとめておきます…